IT・デジタル関連では2025年はAIの進化が激しく、日常でのAI利用を実感した年でした。
まもなく迎える2026年は、私たちの生活を根底から変える「特異点」となる年になる可能性を秘めています。
2026年に私たちの日常に大きなインパクトを与えると予測される10の技術トレンドを、まとめました。興味がある項目はより詳細に調べてみることをおすすめします。
- 1. AI:「AIエージェント」があなたの”執事”になる
- 2. 半導体:TSMCの2nmチップがデバイスの”限界”を突破する
- 3. OS/PC:次世代Windowsが”AIネイティブ”PC時代を告げる
- 4. モバイル:Appleの「折りたたみiPhone」が市場を”主流”に変える
- 5. XR:空間コンピュータが”日常の風景”に溶け込む
- 6. 通信:「圏外」という言葉が過去のものになる
- 7. ロボット:AIが”肉体”を持ち、現実世界で働き始める
- 8. セキュリティ:量子コンピュータの”脅威”への備えが本格化する
- 9. Web:情報を「探す」時代が終わり、「答え」を受け取る時代へ
- 10. サイバー:AI対AIの”超高速”サイバー戦争が始まる
- 最後に
1. AI:「AIエージェント」があなたの”執事”になる
2026年、AIとの関わり方は根本的に変わります。これまでのように、私たちが命令を投げかけ、AIが応答を返す「チャット」形式の関係は過去のものとなります。代わりに、自律的にタスクを遂行する「AIエージェント」が本格的に普及し始めます。
これは、ユーザーが「〇〇を調べて」と指示するのではなく、たとえば「来週の出張を手配して」と依頼するだけで、AIエージェントは、その意図を汲み取り、自らPCを操作してフライトやホテルを比較検討し、最適なプランを予約するところまでを代行します。
AIは単なるツールから、私たちのパーソナルな“執事”へと進化します。私たちのコンピューターとの関わり方は、命令から「依頼」へと根本的に変わります。
2. 半導体:TSMCの2nmチップがデバイスの”限界”を突破する

テクノロジーの進化は、その土台となる半導体の性能に大きく依存します。2026年には、半導体製造で圧倒的シェアを誇る、TSMCによる「2nmプロセス」のチップが、各種デバイスに搭載され始めます。
これには、Appleの次世代iPhoneに搭載される予定の「A20チップ」や、NVIDIAの次世代GPUなどが含まれます。
2nmという微細化は、単なるスペック向上だけではなく、処理性能と電力効率における「限界突破」です。これにより、スマートフォンやPCはこれまで以上にパワフルかつ長時間駆動が可能になり、より高度なAI処理やXR体験が、手元のデバイスで実現します。
この基盤となるハードウェアの飛躍が、多くの技術トレンドを支える原動力となります。
ただし、Appleなど一部のTSMC主要顧客による、2nmチップの独占が懸念されます。このままTSMCの1強状態が続くと、CPU高騰などによる製品価格の上昇リスクが高まりそうです。
3. OS/PC:次世代Windowsが”AIネイティブ”PC時代を告げる
2025年10月のWindows 10サポート終了に伴い、PCの買い替え需要は2026年にピークを迎えます。そのタイミングで登場が予測されるのが、次世代Windows(Windows 12の呼称が有力)です。
この新しいOSの最大の特徴は、単なる機能追加ではなく、AI(特にNPUと呼ばれるAI専用プロセッサ)の活用を前提としてゼロから設計される点にあります。
これは、OSのあらゆる部分にAIが深く統合されることを意味します。例えば、ファイルを探すのではなく「先週の会議で使った資料」と話しかけるだけで見つけてくれたり、ユーザーの作業パターンを学習してシステムを自動で最適化したりといった体験が当たり前になります。PCはもはや単なる”道具”ではなく、ユーザーの意図を先読みする”賢い相棒”へと進化するのです。
ただし、以下でも書きましたが、メモリー販売大手のMicron社が「Crucial」ブランドを含む個人向け(コンシューマー向け)メモリーとストレージ製品の販売を、2026年2月を目処に終了すると発表され、2026年はPCなどデジタルデバイス価格の高騰が予想されます。それに伴い次世代Windowsの登場も遅れるかもしれません。

4. モバイル:Appleの「折りたたみiPhone」が市場を”主流”に変える
これまで一部のガジェット好きやアーリーアダプター向けの「特殊な選択肢」と見なされてきた折りたたみスマートフォン。その市場が2026年、大きな転換点を迎える可能性があります。その引き金となるのが、Appleによる初の「折りたたみiPhone」の発売です。
Appleが新しいフォームファクタを採用することで、ニッチからメインストリームへと昇格する可能性があります。Appleの参入は、洗練されたUI/UXとエコシステムとの連携によって、折りたたみデバイスの実用性を一気に高め、一般ユーザーにとっての「当たり前の選択肢」に変えるかもしれません。これにより、スマートフォン業界全体のデザインと競争のあり方が変わりそうです。
ただし、最近のAppleは2025年のiPhone Air発売で、超薄型スマホの波が来るかと思いきや、それほど受け入れられませんでした。「折りたたみiPhone」でも同様の反応となるかもしれません。
5. XR:空間コンピュータが”日常の風景”に溶け込む

Apple Vision Proの登場で幕を開けた空間コンピュータ元年。2026年には、その普及を加速させる第二波が訪れます。より価格を抑えた「Vision Proの廉価版」や、さらに軽量化された他社製の新型ARグラスが登場し、この技術がより多くの人々の手に届くようになります。
これに伴い、最も重要な変化は「日常的にXRデバイスを装着する」という文化の始まりです。仕事の会議で3Dモデルを共有したり、街を歩きながらナビゲーション情報を現実世界に重ねて見たり、友人と仮想空間でコミュニケーションを取ったりすることが、特別な体験ではなくなります。XRデバイスは、私たちの視界を拡張する新たなインフラとして、日常の風景に溶け込み始めるでしょう。
デジタル情報は画面の中にあるのではなく、私たちがいる空間そのものに重ねられるようになります。
この分野で特に期待しているのは、長時間(1日以上)利用できる機能特化型のXRデバイスです。2025年に登場した「Even G2」のようなリアルタイム翻訳グラスのようなものが多数登場してほしいです。
6. 通信:「圏外」という言葉が過去のものになる
人工衛星とスマートフォンが直接通信する技術が標準機能として一般化します。これにより、山奥や海上といった従来の「圏外」エリアでも、緊急時の連絡や基本的なメッセージングが可能になります。これは、あらゆる場所での安全確保という根源的な課題を解決する大きな一歩です。
それと同時に、都市部や主要エリアでは次世代通信規格「6G」の標準化が本格化します。6Gは5Gを遥かに超える超高速・超低遅延通信を実現し、本稿で紹介するような高度なAIエージェントやXR体験を、いつでもどこでもスムーズに利用するための神経網となります。
衛星通信が「繋がらない」場所をなくし、6Gが「繋がっている」場所の体験を異次元へと引き上げます。
7. ロボット:AIが”肉体”を持ち、現実世界で働き始める

これまで研究開発の段階にあった人型の汎用ロボットが、いよいよ実社会でその役割を果たし始めます。Teslaの「Optimus」に代表されるロボットたちが、2026年にはコンセプト映像の世界を飛び出し、実際の工場や物流倉庫といった現場へと導入されるでしょう。
これは、AIがデジタル空間の知性としてだけでなく、物理的な「肉体」を得て、現実世界で労働力となる「実用期」に入ったことを意味します。単純作業や危険な作業をロボットが担うことで、生産性は飛躍的に向上し、人間の労働のあり方について、社会全体で改めて考えるきっかけとなるはずです。
デジタル空間に限定されていたAIの知性が、物理的な”身体”を得て、現実世界の労働を担い始めます。
8. セキュリティ:量子コンピュータの”脅威”への備えが本格化する
私たちのデジタル社会は、現在の暗号技術によって守られています。しかし、将来登場するであろう「量子コンピュータ」は、その暗号を容易に解読してしまう力を持つとされています。
これは、数年後にあらゆる鍵を開けられる『魔法の鍵』の登場が予見されている状況で、今のうちに世界中のドアの鍵を、その魔法が効かない全く新しい仕組みのものに交換する必要があります。
この未来の脅威に備えるため、水面下で進められているのが、量子コンピュータにも破られない新しい暗号「耐量子計算機暗号(PQC)」への移行です。2026年、このPQCへの移行が、特に政府機関や金融機関など、国家レベルのインフラで本格的に加速します。
これは一般のユーザーの目には触れにくい変化ですが、私たちの個人情報、金融資産、そして社会全体の安全を守るために不可欠な、サイバー空間のインフラ防衛競争です。
こういった未来への備えへの対応力を指標に、自身の資産を預ける先を検討してみてはいかがでしょうか。
9. Web:情報を「探す」時代が終わり、「答え」を受け取る時代へ
私たちは長年、情報を得るためにGoogleなどの「検索エンジン」を使い、表示されたリンクのリストから答えを「探す」という行為を繰り返してきました。2026年、この情報アクセスの作法が根本から変わります。AIが私たちの質問の意図を深く理解し、Web上の膨大な情報を解釈・統合して、直接的な「答え」を生成して提示するスタイルが主流になるからです。
この変化により、ユーザーが情報源を一つひとつ確認し、比較検討する手間と時間は劇的に削減されます。「調べる」という行為そのものがなくなり、私たちはもはや情報の”探求者”ではなく、最適化された知識の”受信者”へと変わっていくのかもしれません。
「ググる」という動詞が、過去の遺物になる時代が始まっています。
10. サイバー:AI対AIの”超高速”サイバー戦争が始まる
サイバーセキュリティの領域も、AIによって新たな時代を迎えます。これまでは人間が攻撃を発見し、対策を講じていました。しかし2026年には、攻撃を仕掛けるのもAI、それをリアルタイムで検知し防御するのもAIという、「AI対AI」の自律的な攻防が当たり前になります。
このサイバー戦争の最大の特徴は、その「速度」です。攻撃と防御の応酬は、ミリ秒、マイクロ秒という単位で行われ、人間の判断や介入が全く追いつかないスピードで進行します。私たちのデジタル社会の安全は、自律的に思考し行動するAIエージェントの手に委ねられることになるのです。
サイバー空間の攻防は、もはや人間の時間感覚では捉えられない領域へと突入します。
最後に
2026年に向けた10の予測を概観すると、共通する大きな潮流として、AIが私たちの指示を待つ受動的な存在から、意図を先読みして自律的に行動する能動的なパートナーへと進化すること。そして、デジタル情報と物理現実の境界線が、XRデバイスやロボットを通じて曖昧になっていくことです。
これらの変化がもたらすのは、計り知れない利便性だけではありません。AIが自律的に社会を動かす時代には、サイバーセキュリティの新たな脅威、労働市場の構造変化、そしてAIが生成する情報の真偽といった、私たちが向き合うべき新たな課題も生まれます。
2026年は、このテクノロジーがもたらすメリット、デメリットの両方を見据え、私たちがどのような未来を選択するのかを問い直す、重要な分岐点となりそうです。

