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DXに捕らわれる経営者と振り回される担当者

課題には簡単・単純な解決策から探るべき

先日デジタルトランスフォーメーション(DX)について少し書きました。

本物のDXとは?事例からDXへの理解を深めよう
本物のDXをGoogleリキャプチャを例に理解する 日本企業でもデジタルトランスフォーメーションという言葉が一般的になってきました。略して「DX」で、ビジネスの現場でDXをデラックスという方はもう居ないでしょう。 デジタル技術により生活やビ...

DXを実現するためには、まず本質を知るべきということでしたが、最近そのDXに経営者が捕らわれてしまい、担当者が振り回され何も前に進まないといった事態が起こっています。

元々日本企業は諸外国に比べ生産性が低く、ホワイトカラーと呼ばれる業務についている方は、業務時間のほとんどを生産性に寄与しない、低付加価値業務に費やしていると言われています。そんななかDXに捕らわれた経営者からの余計な指示で、さらに生産性が落ちる。そういった事が起こっています。

課題の本質を見極めずにデジタルで解決をはかろうとする

例えば「社内で発行している社内報があまり読まれていない」そんな課題があった場合に、まず課題の内容を確認します。各フロアに設置しているマガジンラックに、毎月社内報を発行して配布しているが、1割ちょっとしか読まれずほぼラックに残ってしまっている。この事例では新型コロナの影響は無視してください。

こういった課題に対して、もっと読まれるように対策を考えたいとし、社内報委員は以下のようなことを考えました。

  • 表紙をもっと目立つ配色のデザインに変更する
  • 内容を充実させページ数を増やす

しかし、経営層はもっとDX的思考で解決法を検討しろ!と要求し、社内報委員は課題解決に多大な時間と労力を費やしました。結局社内SNSを作って、そこから情報をピックアップし深堀りしたネタで社内報として発行する案となりました。

提案した経営者はDX成功例として、この結果に非常に満足したようです。

上記事例について、ほとんどの方は「バカらしい」と感じたのでは無いでしょうか。

まずナッジで解決をはかる

ナッジ(nudge)とはそっと後押しをするということで、この概念を「選択肢を排除せず、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能なかたちで変える選択アーキテクチャの要素」と定義しています。

先ほどの事例の課題は、社内報があまり読まれていないので、少しでも読んでもらえるよう改善したいということでした。社内報作成チームでは社内報の表紙や内容の改善をまず考えました。しかし、実はその前にもうひとつ実施すべきことがありそうです。

ナッジ的な考え方で、お金をかけずに人々の行動を変える手段として、マガジンラックの位置を変更し、人々の導線や目線位置に入るような高さの場所へ移動することです。そんなことで改善するの?と思われるかもしれませんが、先ほどの例のようにDXだ!とばかり、時間とお金を費やして本来の目的を忘れてしまうよりは実行する価値はあります。しかも時間もお金もほとんどかかりません。

上記のような事例を詳細知りたい方へおすすめ本

日々いろいろな課題が発生しますが、解決には様々なアプローチがあります。当然DX的な思考で解決をはかるべきものもあります。間違ったアプローチをしてしまいそうになった時に、立ち止まるには多くの事例や課題解決に向けた考え方をしっかり持っておくことだと思います。

そのためには他社事例などは非常に参考になります。

先ほどのナッジという概念を私が知るキッカケとなった「ワーク・ルールズ」という本は非常におすすめです。Googleの元人事のトップのラズロ・ボック氏の著書で、少し古い本なのですが、日本企業にとってGoogleの事例はかなり先進的で今でも通用します。

しかも、こういった企業の事例をまとめた本は、詳細な部分はオブラートに包まれていて、普通の事しか書いてないなと思うことが多いのですが、この本のあとがきにも書かれていますが、執筆に関してGoogle創業者のラリーペイジ、セルゲイ・ブリンが、情報の一部公開を快く承諾したということで、結構詳細なところまで書かれており、非常に参考になりました。この本はマネージメント層の方は必携だと思います。

本記事のタイトルにも書いていますが、マネージメント層のちょっとした言葉が担当者を振り回すことになります。こういった先人の知恵から自分の考え方をアップデートしていくことも大事です。

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