1. はじめに
人工知能(AI)がソフトウェア開発の現場に革命をもたらす中、AIを活用したコーディング支援ツール市場は急速な成長を遂げています。開発者の生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めたこれらのツールの中でも、先行するスタートアップ製品である Cursor と、巨大テック企業Googleが投入した新星 Google Antigravity は、特に大きな注目を集めています。
両ツールは、世界中の開発者に親しまれているVisual Studio Code(VS Code)のフォーク(派生版)をベースとしており、AIとの対話を通じてコーディングプロセスを根本から変革することを目指しています。
私も年末年始の休暇を活用し、主にGoogle Antigravityで簡単な自動化ツール作成など行いましたが、AIコーディングIDEはソフトウェア開発だけではなく、ホワイトカラーの働き方を根本的に変えるツールになりそうです。
本分析では、この2つの強力なAIコーディングIDEを、以下の4つの主要な観点から比較・評価します。(2026年1月7日時点の情報)
- 機能性
- UI/UX(ユーザーインターフェースと体験)
- 価格設定
- 市場戦略
それぞれのツールがどのような強みと弱みを持ち、どのような開発者層をターゲットとしているのかを明らかにすることで、読者の皆様に客観的かつ実践的な洞察を提供することを目的とします。
2. 基本プロファイル比較
詳細な機能比較に入る前に、CursorとGoogle Antigravityの基本的な属性を比較し、両者の立ち位置とコンセプトの違いを明確にすることは極めて重要です。以下の表は、両ツールの核心的な特徴を一覧にしたものであり、読者が一目でその全体像を把握する助けとなります。
| 比較項目 | Cursor | Google Antigravity |
|---|---|---|
| 開発元 | Cursor (スタートアップ) | |
| 基本コンセプト | 複数のAIモデルを選択可能な、成熟した多機能AIコーディングエディタ | Geminiモデルとの緊密な統合と、高度な自動化を目指すエージェント中心のAIコーディング環境 |
| プラットフォーム | VS CodeフォークベースのデスクトップIDE | VS CodeフォークベースのデスクトップIDE |
この比較から明らかなように、Cursorは市場の先行者として、機能の豊富さとAIモデル選択の柔軟性を強みとする プレミアムツール としての地位を確立しています。
一方、Google Antigravityは、自社の強力なGeminiモデルとのエコシステム連携と、「エージェント」による高度な自動化を武器に、市場に後発ながらも強力なインパクトを与えようとしています。
3. 機能比較
AIコーディングツールの真価は、その中核となる機能性にあります。開発者のワークフローをいかに効率化し、創造性を高めることができるかが、製品の価値を決定づけます。
3.1 AIモデルの選択肢とエコシステム戦略
利用可能なAIモデルの選択肢は、単なる機能リストではなく、企業の戦略的意図を反映します。ここで重要なのは、AIモデルを動作させるための周辺ツール群、すなわち「ハーネス」の設計思想です。
- Cursor: 普遍的な「ハーネス」
GPT-5.1、Anthropic社のClaudeシリーズ、そして自社開発モデルなど、市場の主要なAIモデルを幅広くサポート。ユーザーは特定のAIエコシステムに縛られることなく、タスクに応じて最適なモデルを自由に選択できます。 - Google Antigravity: 特化型の「ハーネス」
自社の Gemini 3 Pro を最大限に活かす設計ですが、Anthropic社の最上位モデルであるClaude Opus 4.5など、厳選された高性能モデルも利用可能です。しかし、現時点ではOpenAIのプロプライエタリモデルは提供されておらず、これはGoogleへのユーザーの囲い込みを狙う明確な戦略の現れと言えるでしょう。
3.2 AIエージェント機能
両ツールは、単なるコード補完を超えた「エージェント機能」を搭載していますが、その設計思想には顕著な違いが見られます。
Cursorの コンテスト形式 は、複数のAIモデルにタスクを実行させ最良の結果を選択するという、LLMの弱点を強みに変える機能です。
一方、Antigravityの アーティファクト機能 は、実行計画や成果物をログとして残すことで、「ハンズオフ」な自動化における信頼性と監査可能性を提供します。
3.3 成熟度と安定性
ソフトウェアの成熟度は、日々の開発作業における信頼性とユーザー体験に直結します。
Cursorは約2年間の実績があり成熟していますが、Antigravityは新規参入のため、一部のレビュアーから安定性の課題(画像表示エラーなど)も報告されています。
4. UI/UX評価
両ツールはVS Codeベースで操作性は高いですが、AIの統合思想が異なります。
- Cursor: AIを「コラボレーター(協業者)」と位置づけ、IDE内での密接な対話を重視。
- Google Antigravity: 開発者を「オーケストレーター(指揮者)」と位置づけ、別ウィンドウのエージェントマネージャーで自律タスクを管理。
現状では、Cursorの方がより成熟し、洗練されたUI/UXを提供していると評価されています。
5. 価格設定とビジネス戦略
Googleの攻撃的な価格戦略が際立っています。
- 寛大な無料プラン: 期間限定ではない長期的な無料枠。
- バンドル戦略: 上位プランにYouTube Premium等をバンドルし、エコシステムへのロックインを図る(ロスリーダー戦略の可能性)。
6. 市場ポジショニングと結論

現時点では、Cursorが「わずかな優位」を保っている と評価します。実務における安定性と信頼性が勝っているためです。
しかし、Google Antigravityはその資金力とエコシステムを背景に猛追しており、その差は僅かです。
特にソフトウェア開発以外の用途、例えば記事執筆や事務作業の自動化や補助のような利用である場合、AIが積極的に作業を実施してくれるGoogle Antigravityのほうが親和性が高いという方も多そうです。
今後の市場動向は、Cursorのスピード感ある革新と、Antigravityの成熟度向上にかかっています。


