車のデジタルミラーが増えすぎると危険!人間の欠点を把握し対策を

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ディスプレイとミラーでは目の動きに大きな差

自動車の内装にディスプレイがどんどん増えています。インパネ周りのディスプレイやデジタルメーターも一般的になりました。

さらに後方確認のためのルームミラー(バックミラー)もデジタルインナーミラーが増えており、次はドアミラー(サイドミラー)のデジタル化も導入され始めています。しかし、これ以上車内にディスプレイが増えると、安全性を損なう恐れがあるのではないかと懸念しています。

運転中にディスプレイに視線を移す機会が増えてしまう

当然のことながら、ディスプレイの数が増えると、そちらに視線を移す機会が増えてしまいます。運転時はなるべく遠くまで見ておくことが、安全運転につながります。何百mも先を見て運転しているところから、車内の数十cmという距離のディスプレイに視線を移すという行為が目の負担増につながるのは確実です。

従来のナビやデジタルメーターの場合はそこまで頻繁には見ないでしょうが、ルームミラーやドアミラーは運転中も頻繁に見ますので、その度に視点距離が大幅に変わるのは、気付かぬうちに疲労が蓄積されそうです。

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上記はデジタルミラーを採用しているレクサスの公式動画です。動画を見るとデジタルミラーの利点もたくさんある事が分かります。特に死角が減るという部分は大きな利点です。これから記載する人間の欠点を把握し、さらにデジタルミラーの利点も活かせるような進化が必要です。

人間の目は思っている以上に見えていない

視線や視点の移動が多いほど、運転への集中力が欠けて、見えているつもりでも見えていない状況が増えます。

以下は人間は見えているつもりが全く見えていない事を確認する、「Selective attention test」という有名なテストです、日本語では「選択的注意のテスト」。

以下の動画で「白チームが何回パスしたか」を、しっかり目をこらして数えてみてください。

動画内でも質問が出ていましたが、パス回数を数えている間にゴリラが横切って歩いていることに気付きましたか?小さな画面内でのことですが、最初から最後まで全く気付かなかったり、途中から気付いたりと意外に見えていないことが多いです。

人間の脳は一点に集中すると、それ以外の部分は除外します。

この脳の機能については、カクテルパーティ効果が有名で、人が大勢居る会場などでも、自分の名前が呼ばれたりすると、そこだけ切り取ったように聞こえたり、逆に興味の無い会話は全く耳に入ってきません。

自動車の運転でも、ディスプレイを注視している間は、他のところはほとんど見えていないということが分かります。

人間の脳は見えていないものを見せる

上記のようにほとんど見えていないという話しをすると、必ず「私はしっかり全体が見えているし。」と反論されますが、見えていると感じている部分の多くは脳が作り出した映像である場合もあります。見えていない部分が急に途切れると混乱するため、脳が穴埋めに映像を作ります。錯覚などでも脳が騙されて見えていないものが見えることがあります。

歩きスマホをする人が前も見ているつもりでも、人やモノにぶつかってしまうのもそのためです。実は全く見えていないため、ぶつかるまで気付きません。

また、時計の秒針に目を移したときに、秒針が動くまで1秒以上あるように感じる、Chronostasis(クロノスタシス)という現象も、脳が穴埋めして整合を取っているためです。当然、秒針は正しく1秒で刻んでいますが、脳は1秒以上かかっているように認識しています。

車の運転で1秒見えていないというのは致命的です。例えばディスプレイを0.5秒見て、そこから前方に目を移した時に、急な視点移動に脳が対応できずに、穴埋め映像が見えてしまっている場合、その間も車は進んでいますから、気付いた時には事故が起こった後だということにもなりかねません。当の本人は前を見ていたつもりが、何も見えていなかったということになります。

先日も対向車線からまっすぐバイクが直進してきているのに、前方の車がゆっくりと右折しだして、あわや事故寸前という場面に出くわしました。当然右折しだしたドライバーは前を見ていますので、視野角的にはバイクは入っているはずですが、運転者には全く見えていなかったのでしょう。

光学ミラーとデジタルミラーのいいとこ取りに期待

上の図の通り、光学ミラーは光を反射していますので、後方を見る場合の視点距離は後方のずっと先になります。ですので前方を見ている状態から、ミラーをチラッと見てもピントはあいます。しかし、デジタルミラーは後方の映像を車内のディスプレイに映していますので、遠距離にピントをあわせている状態から、近距離に視点を移動することになります。

若い時にはあまり問題が無いかもしれませんが、40代過ぎたあたりから、視点移動への追従性は衰えてくるでしょう。そうなると疲労の蓄積も早くなります。

デジタルミラーには光学ミラーには無い利点があります。デジタルミラー搭載車に乗る場合には、上にも書いたような人間の構造上の欠点をしっかり理解したうえで、スピードは抑えて万が一の時にも回避行動がとれるような、ゆとりある運転を心がける必要がありそうです。

また、光学ミラーとデジタルミラーのいいとこ取りをしたような、機能の進化に期待したいところです。

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