本物のDXをGoogleリキャプチャを例に理解する
日本企業でもデジタルトランスフォーメーションという言葉が一般的になってきました。略して「DX」で、ビジネスの現場でDXをデラックスという方はもう居ないでしょう。
デジタル技術により生活やビジネスを変容させることが重要ですが、現状では人間の仕事をITに置換え自動化したり、データ分析に力を入れたりすることで、DXの実現と言っている場合も多そうです。
DXの入口としてのデジタル化は問題なし
いきなりDXだ!と気合いを入れてもいきなりすべてを変えることは困難です。DXの実現に向けた入口として、IT活用による業務の自動化やデータ分析の強化は良いことだと思います。しかし、その事がDXの本質だと勘違いし、そこに留まってしまうのはグローバル社会で生き抜くためには問題です。
では本物のDXとはどういったことなのか?社内に啓蒙する立場でどのように説明すると理解を深めることが出来るでしょうか。
本物のDXについて理解を得るには本物の事例で
DX事例を語る場合によく例として取り上げられるモデルはUber(Uber Eats)やAirbnbですが、この2社の事例ですとデジタル関連に疎い方にはなかなか伝わりにくいのではないかと感じます。変革の根幹になる部分がデジタルに詳しくないと、これがDXだよねと感じ取りにくいからです。私は本物のDXを実感するのに分かりやすい例として、Googleのリキャプチャ(reCAPTCHA)を推します。
リキャプチャはGoogleが提供する不正な攻撃からWebサイトを守る技術です。WEBサービスへのログイン時に、以下のような歪んだ文字や写真の選択をする画面に見覚えが無いでしょうか。これがリキャプチャです。これをGoogleは無料で提供しています。
Googleはこのサービスを提供する見返りに、歪んだ文字を表示するものはOCRで読み取れなかった文字の校正を、写真選択のものはAI解析の補完を世界中の人たちに担ってもらうことができます。
Googleは世界中の文書をデジタル化するという取り組みを行っています。そのために文書をスキャナで読み取り、デジタルデータに置換えるのですが、文字が歪んでいたり古い書籍だったりすると、機械で正しくデータ化出来ないものが出てきます。
通常の企業ですと、機械で読み取れないデータを校正するために人を雇う(Googleの規模ですと世界中で雇う必要)ところですが、Googleはリキャプチャというサービスを新たに提供しつつ、別の事業のデータ校正を世界中の人々に担ってもらう事を考えました。これにより機械で読み取れなかった文字はリキャプチャとして提供され、読み取れなかった文書文字のデジタル化が完了というサイクルが出来上がります。
本物のDXとは?を考える時には振り切った想定を
企業内でDXを考えるとき、通常では考えないレベルまで振り切った想定をして検討するのも良いかと思います。
例えば自社の「主力製品が1年後に法律で販売を禁じられる」、「現在の半数の社員で事業を継続しないといけない」といったありえないと思われるシチュエーションに対応しなければならない、という想定でディスカッションしてみると、それらに対応するためのDX実現のアイデアが生まれるかもしれません。具体的なアイデア部分については他社事例は関係ありません。逆に他社が実現していないアイデアが有効である可能性が高いです。
ディスカッションの手法として、ありえないと感じる振り切った想定で行うというのは、アイデアの発想手法としては一般的ですが、実際に社内でそういったディスカッションはしづらい雰囲気があり、無難なところに落ち着くことが多いです。
日本人は特にマジメに働くことを美徳として、楽して儲けるのはズルいという思考が強いです。楽して儲けるを追及することが今後生き抜くためには重要で、楽して儲けることが本物のDXを考えるうえで重要ではないかと私は考えます。