即終了した現金バックのキャッシュふる、登場の背景とふるさと納税制度の課題

経済

返礼品として現金がもらえるサービス即終了

株式会社DEPARTUREが開始した「キャッシュふる」は、ふるさと納税の返礼品を現金で受け取れるという画期的なサービスとしてスタートしましたが、開始からわずか2日でサービス終了となりました。

リリース時の情報を見ると自治体が抱える問題に着目し、サービス設計がされており、地方自治体と納税者(国民)のWin-Winを目指す思想からスタートしたと思われます。

サービス終了を報じたニュースサイトのコメント欄などを見ると、ふるさと納税の現金化は道義に反する的な、見出しだけを見て内容をよく確認せず意見されている方も多いですが、このサービスが登場した経緯などを確認することで、ふるさと納税制度の問題を知る機会になりそうです。

キャッシュふるの仕組み

キャッシュふるは仲介サービスになります。返礼品に興味はないけれど、ふるさと納税の制度は活用したいという層が一定数居ると仮定し、そうした方々が気軽に制度活用できるように作られたサービスです。

上の図のように返礼品をキャッシュふるが代理で受け取り、返礼品が欲しい方へキャッシュふるが販売します。販売して得た売上から手数料を引いた金額を納税者(国民)へ現金で還元するという仕組みです。

また、キャッシュふるはこの仕組みで得た手数料で運営されるため、各自治体が負担するポータル掲載手数料を0円とし、自治体収入を増やすことを目指すという目的もありました。

ふるさと納税制度の目的

ここで、ふるさと納税制度の目的について確認しておきましょう。総務省のサイトにふるさと納税の「三つの大きな意義」が掲載されています。

  • 第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。
  • 第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。
  • 第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。

ふるさと納税の魅力として返礼品と税金還付ばかりに目がいきますが、本来の目的は上記の三つの大きな意義に記載されている、要するに地方の魅力を知ってもらい、地方に活力をということです。

ふるさと納税の目的と合致せずサービス終了

「キャッシュふる」の仕組みや目指す方向性とふるさと納税制度の本来目的が合致せず、結局サービス開始より2日でサービス終了となりました。

恐らく、ただの仲介サービスとして開始すると、周囲の批判が起こることはサービス開始前から想定していたはずで、批判をかわすために現状のポータル掲載手数料(約10%)による各自治体収入が圧迫されている課題解決をサービスの目的に加えたのだと思いますが、ふるさと納税制度の目的そのものと合致しないということで、総務省から批判されてしまうという結果となりました。キャッシュふるに対する総務省の反応からも分かるとおり、サービス開始前に総務省や他関係者と調整等は一切行っていないと思われます。

ふるさと納税制度の問題点

キャッシュふるの新事業立上げは残念ながらお粗末という他ありませんが、事業設計についてはいろいろ考えさせられるところだと思います。

現在のふるさと納税制度は課題が山積みで、返礼品もその地方の特産品ではなく、納税者(国民)がより多く寄付をしてくれるような商品をわざわざ調達しなければ寄付が集まらないという状況です。当然、各自治体で商品を調達する手間がかかるうえ、地方間で競争が起こる事から自治体に入る収入も圧迫されています。さらに、ふるさと納税関連のポータルサイト掲載手数料や広告費の高騰も課題です。

上記課題はすこしずつ改善されているようですが、現状で寄付を行う納税者(国民)側でできることを考えてみましょう。

納税者(国民)側も制度の本来の目的を再確認

地方に活力をという本来の目的を再確認し、納税者(国民)側も応援する地方にどうすれば最大限貢献できるのかを考える必要がありそうです。

まずふるさと納税をする場合は必ず「寄付先の自治体のサイト」を確認しましょう。ふるさと納税の寄付手続きのページを確認すると、以下のように申し込みサイトのリンクがあると思いますが、この中で一番上に掲載されているサイトから申し込みましょう。

一番上に掲載されているサイトが、その自治体にとって最も推奨しているサイトのはずです。私が広報担当者ならそうします。ポータル掲載手数料が安いですとか、特定のポータルからの申し込みに力を入れているですとか、理由はさまざまだと思いますが、寄付先の自治体が一番嬉しいかたちで寄付するのが良いでしょう。

ふるさと納税制度を活用される方の多くは、確定申告を省略できるワンストップ特例制度を利用されるかと思います。寄付時にこの申請書を自治体より送付してもらうかを選択出来ます。この申請書は定型のフォーマットですので、可能なかぎり自治体サイトより各自プリントアウトするようにしましょう。そうすることで自治体からの申請書の送付の手間と費用を削減できます。

ほかにも納税者(国民)側でできる工夫があるかもしれません。意識して寄付することでふるさと納税本来の目的を考えるキッカケになるのではないでしょうか。

総務省|ふるさと納税ポータルサイト
ふるさと納税で日本を元気に!ふるさと納税の意義や納税制度、ふるさと納税の制度改正についてご案内いたします。

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