通信サービス障害時に備え、振替輸送的な仕組みを取り入れる必要性

経済

かなり難しい課題だが相互ローミングは必須か

KDDIの大規模通信障害の発生から86時間経過した、7月5日 15時36分に全面復旧が発表されました。大手通信事業者の障害では最長ではないでしょうか。(何十年も前まで遡れば事例はあるかも)

最近ではデータ通信が主流で電話回線の重要性が下がってきているとはいえ、影響度合いは大きかったようです。

先日、こういった事態に備え、各自でバックアップ手段を用意する必要性を以下で書きましたが、ライフラインとなった携帯電話回線を預かる事業者として、携帯電話各社はなんらかの対応を迫られそうです。

KDDI通信障害!もしもの時のバックアップを考える
障害時の代替サービスなどを押さえておく 本日2022年7月2日にKDDIのau回線で大規模障害が発生し、まもなく丸1日が経過しようとしていますが、まだ完全復旧の目途は経っていません。 音声通話の交換機障害と発表されていますが、それ以上の詳細...

その最有力候補は回線設備を持つ、MNO事業者間で相互ローミングする仕組みの確立です。

そう簡単ではない相互ローミング

回線設備を持つMNO事業者間では、すでに一部ローミングは実施していますが、災害や障害時に事業者間で助け合う相互ローミングまでは実現していません。

相互ローミングとは、電車でいうところの振替輸送のようなもので、たとえばJRが事故等で長時間停止した場合に、私鉄各社を振替輸送としてJRの乗車券で利用できます。このような仕組みを携帯電話でも確立し、KDDIの回線が長期間停止となった場合には、NTTドコモやソフトバンク回線を追加料金無しに利用できるといったことが可能になります。

しかし、最近では携帯電話料金の値下げ圧力等もあり、各社ギリギリの設備投資で運用しています。そこに今回のKDDIのような障害が発生し、3000万回線超のトラフィックが流れ込んでくることを想定するのは、かなり厳しいことは想像できます。

技術面の課題もありますが、その前に運用ルールの整備も重要になりそうです。

電車の場合は、物理的に乗れないから時間をずらそうといったことを乗客が自ら判断できますが、通信回線の場合は繋がらない場合に、リトライしてしまうことでトラフィックの輻輳が冗長する傾向にあります。そうなると最悪の場合は相互ローミング先の各社も、芋づる式に障害が発生するかもしれません。

音声回線は難しいかもしれないがデータ通信だけでも実現して欲しい

災害時のローミング実現には課題も多いですが、データ通信だけでも長時間停止時にローミングで継続して利用できるような仕組みを導入して欲しいです。

今回KDDIの障害では、音声通話回線が長時間障害となりました。音声回線のローミングが実現できれば良いのですが、データ通信よりも難しいのではないかと思います。しかし、災害時にライフライン従事者に割り当てられている優先回線などは、使えなくなると人命に関わるかもしれませんので、こういった回線だけでもローミングで他社の回線を利用できるような仕組みは必須だと思います。10年程前にこういった議論がされていましたので、私が知らないだけで実現しているのかもしれませんが、その場合は今回の障害でもある程度緩和できたかと思いますので、恐らくまだ実現していないのではないでしょうか。

コストをとるか品質をとるか

総務省の値下げ圧力により、携帯電話の1回線あたり収入は右肩下がりです。各事業者はPovoやahamoなど格安ブランドを作り、総務省の要請に答える対応を取っています。

当然利益が減れば設備を簡素化したり、品質は落ちるが安い機器に入れ替えたりといった対応が必要になります。

楽天モバイルは既存の大手キャリアのコスト高体質が価格高騰の理由とし、基幹ネットワークに「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」を導入し、低価格を実現すると参入しましたが、現状では大きな赤字となっています。勝手な予想ですが、汎用機器で構成するクラウドネットワークは、想定よりもうまく機能していないのではないでしょうか。

当然楽天モバイルが考えるようなことは、既存大手キャリアも考えているはずで、技術的な課題が多いか、品質面で不安があるなどで採用していないのではないでしょうか。

しかし、この先さらなるコスト削減となると、リスクを取っていく必要も出てくると思います。コストをとるか品質をとるか、難しい選択に迫られているのです。

ある程度の値下げは歓迎ですが、総務省の先を考えない値下げ圧力は疑問でした。海外の低品質な通信事業者と比較して、値下げしろ!とただ叫ぶのは簡単ですが、あまりにも安直すぎると思います。事業者と共に安定したライフラインの確保という観点で、再考していただきたいと思います。

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