まもなく2025年がはじまりますが、しばらくAIの進化が話題の中心となるでしょう。直近で特に話題なのが、動画生成AI「DomoAI」です。
テキストプロンプトからの生成に加え、元となる動画や画像から好みの動画を生成したりと、人間の思い通りの作品が制作しやすくなりました。
しかし、AI技術が進化するほど、盗作などの問題がさらに深刻化しそうです。
以下はDomoAI公式のチュートリアルビデオです。
AIを商用利用するとき考慮すべきこと
まず、DomoAIなどの生成AIの進化を見て、こういったツールを商用に使おうと安易に考えてしまうのは危険です。
EUではAI関連の法律が急速に整備されており、AI法が2024年8月に発効されています。2025年2月より「容認できないリスク」を伴うAIの使用や提供が禁止されます。
当然、著作物の利用に関する規定も含まれており、今後どんどん規制は強まっていくはずです。たとえば将来学習データに関しても規制がかかった場合、AIは学習段階でどのようなデータが使われているのか明らかにされていない場合が多く、利用者は知らず知らずのうちに法に抵触してしまう恐れもあります。
Youtubeなどで気軽に全世界に発信できてしまうこともあり、将来強化されたEU法に触れてしまうかもしれません。巨額の請求をされることも考えられます。
趣味にとどまらず、AIを利用して利益を得ようとする場合、国際的なAI関連法の動きをチェックしておく必要があります。
コンテンツ制作者はアイデンティティをどう守るのか?
Youtube等のWeb上でさまざまなコンテンツが無料で提供される時代となり、有料で買うことに抵抗感がある人が増えました。
クリエイターの方も、コンテンツを売るよりもYoutube等の広告収入のほうが、得られる収益が多いことから、こういう時代なんだと認識されています。
しかし、AIの発展により、自分が作成したコンテンツが別のものに生まれ変わり、知らないところで販売されるということが簡単に起こる時代となりました。
最初に紹介したDomoAIも他の人が作った動画を、別のアニメーションのワンシーンにして別作品とすることが簡単にできてしまいます。
AIは急速に進化しており、法整備が追い付かない可能性もあります。アイデンティティをいかに守るのか考えておく必要がありそうです。
どれほど有効かわかりませんが、いきなりオープンなYoutubeなどのサイトで作品を公開するのではなく、ブロックチェーン技術を使ったNFTでオリジナル作品として公開し、自分がオリジナルであることの証明をしておくなどの手段も考えられます。
上記手段は現時点ではあまり有効ではないかもしれませんが、将来法整備が進んだときに有効になるかもしれません。技術の進歩にあわせて対応方法は考える必要があります。
YoutubeのAI時代の著作権機能に期待
Youtubeは、投稿された動画に対して著作権侵害などのチェックを行い、問題がある場合は適切な措置を取っています。音楽の場合は著作者へ利用料が入るなどの対応がされます。
こういった機能がAI制作物にも適用されるような対応に期待したいところ。
例えば実写の動画を元にAIでアニメーションに作りかえられたものを公開するとき、動画内の動きなどからオリジナルを特定し、動画投稿者には収益は発生せず、オリジナル著作者に利益が入るといったものが考えられます。
このオリジナル著作者というところで、さきほどのNFTでのオリジナル証明も活用できれば、AIが悪ではなくオリジナル制作の強いパートナーとなれるのではないでしょうか。
いたちごっこになるかもしれませんが、世界最大のプラットフォーム運営者として、Googleには頑張っていただきたいところ。
委託先のAI利用にも目を光らせる必要性
すでに問題となっている事例もありますが、制作物を委託する場合に委託会社がAIを使うことにより、著作権侵害に問われることのリスクにも注意が必要です。
とくに最近は人材不足が深刻ですから、AIによる効率化はどこでも考えられていることかと思いますが、企業が生成AIを使うにはまだまだリスクのほうが大きいです。とくに大企業ほど考慮すべき点が多いです。
委託先は中小企業であることが多く、あまり生成AIのリスクを考慮せず利用している場合も多いです。生成AIの進化が速い文書や画像の作成委託については、検収時のチェックは入念に行いましょう。
リスクを考えると生成AIの使用禁止を契約に盛り込むのもありかもしれませんが、さまざまなアプリにAIが組み込まれていることから難しいかもしれません。
委託先に社内で許可された生成AIへのアクセスを許可し、利用してもらうといった対応も考えてみましょう。
こういうことを書くと、いまどきAIに制限って遅れているのでは?と思われるかもしれませんが、無頓着にAIなんでも使用可という企業のほうが遅れていると認識したほうが良いでしょう。個人の趣味利用とは異なります。
生成AIは、クリエイティブな表現の可能性を広げる強力なツールです。しかし、その一方で、著作権問題など、解決すべき課題も山積しています。私たち一人ひとりが、倫理的な観点からAIと向き合い、より良い未来を築いていきましょう。