ネトフリが広告付きの値下げプラン
ネットフリックスの有料会員減少が続いており、2023年に広告付きの値下げプラン導入を検討しているというニュースが話題になっています。
新型コロナ禍での引きこもり需要により、ディズニープラスの会員数は非常に伸びているのとは対照的です。ネットフリックスは市場シェアが高く減少に転じるのは仕方がないとも言えますが、このまま放っておくとディズニープラスに奪われる一方だという判断もあったのか、広告付きでお手軽なプラン追加が検討されています。
日本での会員価格がディズニープラスは月額990円に対して、ネットフリックスはスタンダードが1,490円、4Kが観られるプレミアムが1,980円です。最安のベーシックは990円と同額ですが、機能面で制限が多く同じ価格ならディズニープラスの方が断然良い内容となります。
ネットフリックスの広告付きプランは成功できるのでしょうか。
サブスクの定石が崩れる
定額で会費を払うサブスクリプションモデルのビジネスプランとしては、最初は赤字覚悟のお手軽な価格でスタートし、市場においてある程度以上のシェアを獲得すると、徐々に値上げして利益を拡大させるというものが定石です。
ネットフリックスは2020年には市場シェアは2割を超えており、市場シェア獲得にあわせて2015年と2021年に定石どおり会費を値上げしています。ネットフリックスの見立てでは、2021年の値上げは獲得している市場シェアから問題なしと判断し、値上げしたのだと思いますが、結果は会員減が止まらない状況となっています。
ネットフリックスはサブスクでの勝ちの定石どおりに戦略を進めたはずですが、思わぬ展開にこのままいくと市場シェアがひっくり返る恐れも出てきました。
想定外？ディズニープラスが急進
ネットフリックスの会員を奪っているのはディズニープラスです。直近では800万人近くの会員増となっており、急激にシェアを伸ばしています。
まさに、ディズニープラスは赤字覚悟のお手軽価格で攻めている時期で、サービス内容もどんどん改善されています。ディズニーはブランド的にも強いですし、伸び率を見ていますと数年でネットフリックスに迫る可能性が高いです。
ディズニープラスは会員数は非常に増えていますが、赤字額も大変なことになっています。このことからいずれ値上げするか、上位プランを設定するなど必要かと思いますが、ネットリックスの状況から値上げタイミングには慎重になるかもしれません。
サブスクは儲からないモデルとなるかも
ディスクなどを所有して楽しむモデルから、所有せずコンテンツを楽しむ権利を買うサブスクリプションモデルにいろいろなモノが移行しています。いずれも破壊的な低価格で既存の所有モデルを壊し、サブスクモデルにユーザーを引き込んだところで、価格を吊り上げて利益率を上げることで儲けるモデルとなります。
しかし、コンテンツが溢れている世の中ですから、会費とコンテンツの魅力が釣り合わないと、ユーザーはどんどん別のコンテンツに流れていきます。
スポーツ中継のDAZNは先日月額を1,925円から3,000円へ大幅値上げして、多くの批判を浴びていました。DAZNも既存のスポーツ中継市場を破壊してからの大幅値上げ戦略となっていますが、結局これまでスポーツ観戦コンテンツを好んで視聴していた人の多くを、別のコンテンツに移行させる結果となったのではないでしょうか。すでにテレビ局はスポーツ中継コンテンツに手を出しにくい状況になっており、スポーツ中継自体を観る機会が激減しています。
サブスクは儲かるという神話は崩壊していくのではないでしょうか。
サブスクサービスのライバルは全コンテンツ
人の時間は有限です。すべてのコンテンツで時間の取り合いとなっており、サブスクリプションサービスを考えるとき、これまでは同じ市場の他サービスをライバルとして設定し、サービス内容の充実や価格設定の戦略を考えれば良かったところを、今後は別業種のサブスクサービスも視野に考えないと、儲けられない時代に入ってきました。
歴史的に見ても市場を見誤り対応が遅れることで衰退した事業は多々あります。サブスクサービスにおいても市場シェアを取ったからと安心していては、別分野だと思っていた市場にユーザーを奪われるといったことが発生します。
ライバルは全コンテンツということで、かなり難しく厳しい時代になってきたなと感じました。Amazonのような複数のコンテンツを複合的にサブスク提供する形が安定かもしれませんが、そのような戦略を仕掛けられるのはかなり限られています。異なる業界のサブスクサービスが連携して対抗するような動きも今後出てくるかもしれません。
まずは2023年に設定されるネットフリックスの広告付きモデルが、どのような形になるのか注目したいと思います。
