何故、高度IT人材(DX人材)の育成が進まないのか?

高度IT人材(DX人材)が超売り手市場に

社長もしくは役員から「高度IT人材(DX人材)の育成が急務だ!」と漠然とした指示を受けている人材育成担当の方はたくさんおられるかと思います。従来の日本企業はSIer(外部のITソリューション企業)に委託し、社内のITはほぼ丸投げお任せというのが一般的でした。

しかし、近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)実現に向けた、IT技術の内製化にシフトする企業が急増しています。完全に内製化は無理だとしても、DX実現のためには社員のITスキル向上が必須となっています。しかし、これまでITは外部にお任せな状態から、急に高度IT人材を育てよ、と言ってもそう簡単にはいきません。

高度IT人材育成が進まない根本課題

IT人材の価値は日々高まっており、初任給で1千万円超という企業も出て来ています。特に日本のIT技術者は欧米に比べ給与水準が低かったため、需要が高まってきた今、急速に給与水準が上がって来ています。

IT人材育成が進まない古い体質の企業は、昔のIT人材の給与水準のイメージで考え、給与は上げずに高度IT人材だけを獲得しようなどと都合の良いことを考えているはずです。高度IT人材を本気で育てたいなら、まずそういった人材が満足出来る環境を整備してから、育成方針を定めるべきです。この順序が逆になると高度IT人材が仮に育ったとしても、即座に退職・転職となるでしょう。

現場の人材育成担当の方はそういった事情にも詳しく、高度IT人材を育成した後のことも考えるでしょうから、給与体系など環境が整備されていない場合は、なかなか本気で育成に踏み出せないといったジレンマに陥ります。育成し、ようやく戦力となった途端に退職されるのが怖いためです。

日本でのITは創造とはほど遠く魅力が少ない

ITエンジニアというと自分で新しいものを作り出して提供する。非常に魅力的な仕事というイメージかもしれませんが、現在ではAWSやAzureなどの強力なクラウドプラットフォーム、開発においてはローコードやノーコードが主流となり、エンジニアが一から創造して作るということはほぼありません。

日本のITエンジニアは海外の強力なプラットフォーマーの敷いた線路の上を走るのみになりつつあります。ITエンジニアとして一番面白いところは、ほぼ海外企業が押さえています。今後さらに日本のITエンジニアの裁量は狭くなっていくでしょう。まあ目的を達成するためのハードルが下がるという意味では喜ばしいことですが、独自性を出して差別化を図ることが難しくなっていきます。

昔は日本企業から世界的な標準を作る、という意欲も少しは感じましたが、最近ではすっかり独自仕様は悪のような感じで、AWSなど長いものに巻かれる方向に向かっています。

そんな中でのIT人材育成を考える

社長や役員さんが高度IT人材育成を!と吠えていたとしても、現場の育成担当者は冷静に自社の状況を見極めながら、取捨選択をして適切なIT人材育成を進めていくことが現実的です。さきほども言ったとおり、ITの重要なところは海外のプラットフォーマに押さえられている現状で、独自のプラットフォームが作れるレベルの高度IT人材は、普通の一般企業では不要です。

まず自社の立ち位置や現在がオンプレでレガシーなシステムが主なら、今後を見据えてどのプラットフォーム中心にシフトしていくのかを決め、集中的にIT人材育成を進める必要があります。最初の選択検討が重要ですので、ここは社長や役員と育成担当が密に連携し、時間をしっかりかけて検討のうえ、会社の方針として決定する必要があります。スキル面で不安でしたらコンサルティング会社などに依頼し、第三者視点で支援してもらうのも手です。

コンサルティング会社に依頼する際に注意すべきは、目的や期間をしっかり決めて依頼主から、しっかりとした提案依頼書を提示し、複数社で競争入札することです。ここをいい加減な状態で始めると、なにも決まらないままずるずると時間とお金だけがかかってしまいます。また依頼主のレベルが低いと、コンサルティング会社の担当者もそれ相応のレベルの担当者がやってきます。最初が肝心です。

VUCAの時代で柔軟なスキルをと言っても・・・

VUCAというキーワードが最近流行り、不確実な時代で先が読めないということで、時代の動きにあわせて柔軟にスキルを獲得して、第一線で活躍できる人材に。なんて言葉を聞きますが、たしかにそういった思考は非常に重要です。とはいえ学習にかけられる時間も限られていますし、まずは主体となるスキルあってのものだと思いますので、しっかり会社方針として定めた注力すべきスキルが身に付くよう育成しましょう。また、ある程度スキルが付いた後に力を発揮できる仕事も用意し、成果が出ることによりモチベーションが上がれば、自然と他の事にもチャレンジする意欲が湧きます。そうすればVUCAの時代に対応できる会社が求める人材が誕生するのではないでしょうか。

給与面も含め、そういった人材にしっかり投資が出来る、そんな企業がこれからの時代生き残れるのではないでしょうか。

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