おとり広告で失うものは大きい
「おとり広告」というワードが注目されています。きっかけは回転ずしチェーンのスシローに対し、消費者庁がおとり広告に該当すると認めた、というニュースが報じられたためです。
内容は各ニュースで報じられているため割愛しますが、今回のスシローに限らずおとり広告に関する注意喚起などは常にされており、過去にも様々な業界でおとり広告について消費者庁より注意が入っています。消費者庁のサイトで「おとり広告」と検索すると、308件もの関連情報がヒットします。
ざっと見たところ、光回線の販売に関する注意や指導が多いようです。こんなに多くの事業者がおとり広告を行ってしまうのは何故でしょうか?
おとり広告の基準
再度消費者庁のサイトを確認すると、「おとり広告」にあたるのは以下の4項目に該当することが判断基準になります。
- 取引の申出に係る商品・サービスについて、取引を行うための準備がなされていない場合のその商品・サービスについての表示
- 取引の申出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示
- 取引の申出に係る商品・サービスの供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示
- 取引の申出に係る商品・サービスについて、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品・サービスについての表示
4項目ありますが、重要なのは「限定の内容が明りょうに記載されていない。」ここがポイントのようです。
私は家電量販店のチラシを見るのが好きなのですが、週末になると限定3台と売り出されていることがよくあります。これを限定と記載せずに特価情報だけ記載され、実際にお店に行ってもほとんどの方が購入出来ないとなった場合には、上記の4項目と照らし合わせると「おとり広告」とみなされる可能性が高そうです。
今回のスシローの件も、店舗限定メニューなどではなく、通常販売の商品のように広告していたにも関わらず、商品を取り扱う店舗がかなり限られていたため、おとり広告と判断されました。
おとり広告の基準を知らなくとも、お客様視点で観ればあり得ないこと
今回の件の根本原因を考えるとき、たとえば消費者庁がどのような行為をおとり広告と認定するのかを知らなかったですとか、また、食材の調達が予定通りいかなかった等の理由を挙げても、そんなことはどうでも良いことでしょう。
根本原因は別のところにあります。以下にスシローの企業理念が掲載されています。
スシローの使命は「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯」と謳っています。
企業理念を踏まえると「おとり広告」のルールや、食材の調達問題など関係なく、今回のような行動には至らないはずで、スシロー最大の問題点は企業理念が企業内に全く根付いていないことだと考えます。
その企業で働く人たちは、上司のタスクをこなす以前に企業理念に則って行動するべきです。利益向上が狙える優れたアイデアがあったとしても、実行時に企業理念に反する場合は控える必要があります。日本企業も最近は従業員への企業ブランド浸透に力を入れ始めていますが、まだ企業理念へのリスペクトは低いと言わざるを得ません。
企業で企画をされる方は企業の存在意義を念頭に考えるべき
なんらかの企画をするとき、担当者にとっては事業内の一企画にすぎないと考えているのかもしれませんが、その企画は企業の名前で実行されるため、その一企画が企業の全てとなります。どんなに小さな企画でも企業理念に反していないか、そういった視点で企画を見直すことが重要です。
直近のニュースで福岡パルコという商業施設の展示スペースで、性風俗店の案内所をイメージさせるような案内版を設置したことが問題になりました。企画担当者の趣味かどうかはわかりませんが、その企画が通ってしまい実行されてしまう。
ちなみにパルコWAYという以下のブランドビジョンを打ち出しています。
- 革新的でエッジ―な未来志向を抱く
- カルチャーを創造する
- 前例にとらわれず、(将来の)先例を追求する
- 試みを共にし、育み合う
- “面白い”から価値を生む
- 誰かにとって魅力あるステークホルダーであれ
- 人を驚かせるけれど、人に迷惑をかけない
- 社会と共に楽しむ関係をつくる
上記のうちの「前例にとらわれず」の部分が行き過ぎた結果かもしれませんが、笑い話では済まず企業イメージはかなり下がってしまいました。
自分が働いている会社の企業理念も知らないという方も居られるかもしれませんが、自社のWEBサイトぐらいは確認して、自身がどのように振る舞うべきか考えてみる必要があります。そうすれば、おとり広告のような問題は起こらないのではないでしょうか。