家電量販店を救う?価格指定制は世に受け入れられるのか?

経済

書籍では一般的な価格固定を家電に

パナソニックが家電製品の価格指定制の対象製品を拡大する、というニュースが話題になっています。これは家電量販店に製品は置いているものの、販売はパナソニックが直接実施していることとし、価格もパナソニックが決めた価格で販売を行うものです。これらの製品は量販店で値引きなど価格を変更できません。

これではお店のメリットが無いのでは?と感じてしまいますが、価格指定制の製品はお店が過剰在庫を持つ必要がなく、売れ残ってもパナソニックにそのまま返品するだけです。

通常の販売方法では、売れ残った製品は利益度外視で値引き販売をするしかありませんでした。価格指定制ならお店は在庫リスクもなく、パナソニックは価格を維持することで製品価値が下がることを防ぎます。

家電量販店最大のメリットはネット販売との競争

上記に記載した以外に、価格指定制による量販店最大のメリットは、ネット通販との競争における不利が解消されることです。ネット通販は量販店のような展示スペースや、対応スタッフも不要で、必要最小限の設備で運営できるため、量販店よりも価格面でかなり有利です。

最近では量販店で実際の製品を確認し、実際に購入するのはネット通販という方が非常に多いです。量販店のショーケース化を防止する有効な手段はありませんでした。しかし、価格指定制になればネット通販も量販店も同じ価格となりますので、量販店にとってはかなりのメリットと言えます。

価格指定制にユーザーのメリットはあるのか?

これまでメーカーと量販店、売る側のメリットばかり挙げてきましたが、価格指定制にユーザーメリットはあるのでしょうか。

普通のユーザーでしたら、私は価格指定制のメリットは大きいと思います。まず価格の安い店舗を探すことに時間をかける必要が無くなることです。私はあまり熱心に価格調査はしませんが、ネット通販で購入する際は、いくつかの店舗を軽く確認します。家電製品は複数のモデルが存在する場合が多いうえ、保証も微妙に違っていたりするので、ちょっと価格を調べるといっても、それなりに時間がかかります。価格指定制で価格が同じだと分かっていれば、調べる対象が絞られますから非常に楽です。

また、購入後に値崩れし価格が下がった場合に、損した気分になるということも無くなります。

価格指定制が大きなデメリットだと感じるユーザーは、普通ではないユーザーです。新製品が出るとネット価格などを引き合いに、量販店に無理な値引きを要求するなど、このようなハードクレーマーユーザーにとっては価格指定制はデメリットでしょう。しかし、このようなユーザーのデメリットはこの際、考えなくても良いでしょう。

家電の価格指定制は市民権を得られるのか?

値引き販売が常態化している業界としては、家電の他に自動車販売も値引きが基本になっています。自動車販売においては最近ではブランドイメージ向上と、値引きの抑制を目指している店舗も出てきているように感じます。しかし、最後の一押しは値引きでというところがまだ多いです。かなり昔ですが、米GM系の「サターン」というブランドの自動車が、日本市場に本格進出しようとした際に、値引き販売や日本の自動車業界では当たり前の習慣なども排除することで、低価格で良い製品を提供するという戦略でした。しかし、戦略は功を奏さず、車のデザインが日本人好みでは無かったこともあり、早々に撤退という結果となりました。しかし、今になって考えてみると、あの戦略は今のテスラが実行していることに近かったなと感じます。時代を先取りし過ぎたのかもしれません。

ということで、自動車業界は今だに値引き販売の排除は道半ばです。家電業界ではうまく根付くでしょうか。スタッフが値引き交渉に時間をとられるのではなく、商品説明など売ることにしっかり時間をかけられるよう、メーカー、量販店、ユーザー全員が良い方向に進めば良いと思います。

私はアフターケアが重要な大型家電は、価格が多少高くとも量販店で購入しています。これまでネット通販で購入していたような製品も、量販店で実機を確認して、そのまま気持ちよく購入できるというかたちが健全だと思いますので、価格指定制が正しく受け入れられることに期待したいです。

【おまけ】価格指定制商品のポイント競争

価格指定制商品はどの店舗でも同じか?というと、実際には店舗ポイント競争が起こるかもしれません。お店独自のポイントにどこまでパナソニックが関与できるのか分かりませんが、ポイント競争が変な方向に過熱しないことを願いたいです。すべての店舗を調べたわけではありませんが、現時点ではパナソニックの価格指定製品は、ポイント還元無しが多いような気がします。今後、価格指定製品の範囲が拡大したとき、他店との差を出すためになんらかの対策をするところが出てくるかもしれません。

紙の書籍販売では、ポイント還元は多くとも3%程度です。価格指定制がもっと拡大したとき、ポイントがどの程度で落ち着くのか、今度はポイント比較に時間をとられてしまうのか、今後の動向に注目です。

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