楽天モバイル0円プランは役目を果たしたのか?
楽天モバイルの料金プラン改定が2022年7月1日に実施されます。今回の改定で注目を集めているのは、楽天モバイル最大のメリットであった1GB未満の利用は0円プランが廃止され、0〜3GBの利用が税込1,078円となる点です。
今回のプラン改定で基本料金0円のPOVO(ポヴォ)に移行する人が続出するのではといった予想もあります。
しかし、今回終了となる楽天モバイルの0円プランは、楽天にとって役目を果たすことはできたのでしょうか。
携帯の周波数帯域確保には様々な制約
上記は主要な携帯キャリアが利用可能な周波数帯の一覧です。こちらは楽天モバイルが電波政策懇談会に提出した資料(2021年2月)からの引用です。携帯キャリアは限られた周波数帯を利用し、また、その電波を独占して事業を行っています。周波数帯の割り当て要求時には総務省へ計画書を提出し、その計画を満たすべく事業を行う必要があります。携帯電話事業に総務省があれこれ口出しするのはそのためです。
楽天モバイルは現在1.7GHz帯と3.7GHz帯を利用可能ですが、利用者数や電波利用状況に対して周波数帯の割り当てが少なく今後逼迫する。ということを以前から訴えています。特に広い範囲で安定して利用出来るプラチナバンドと呼ばれる、700〜900MHz帯の再編を要望しています。
0円プランが果たすべき利用者数確保は終了?
携帯電話事業を始める際に示した計画の達成や、利用者や電波利用率の増加に伴う電波割り当て要望など、これらを裏付ける加入者数等のデータには当然0円プランで確保した利用者も含みます。楽天モバイルのプランが税込1,078円スタートであった場合、これほどの利用者数や電波利用率は達成できなかったでしょう。そういう意味では0円プランの役目は果たしたということになります。
また、0円プランにより大手キャリアが格安プランを打ち出すなど、総務省へのアピールポイントも稼いだため、これ以上に赤字を積み上げてまで0円プランを継続する必要は無いと判断したのかもしれません。
しかし、上に掲載した図で2025年に1,500万加入と強気の加入者目標を出していますが、0円プラン終了により加入者増どころか減少に転じそうです。そうなるとプラチナバンドを含めた周波数帯割り当て見直しへの説得力は落ちそうです。
楽天モバイル0円プランで負った傷
0円プランの役目は果たしたかもしれませんが、楽天モバイルは0円プランでいろいろ傷を負ったのではないでしょうか。赤字が膨らんだというのもありますが、まず利用者の急増に設備増強が追い付かず、楽天モバイルは主回線にするには問題があるというイメージがついてしまったことです。1GBまでは0円で使えるので、デュアルSIMのサブ回線として楽天モバイルを使っているというユーザーが多く、サブの楽天モバイルというイメージが強いです。
また、料金水準が下がったことで業界的な旨みがかなり減ってしまったことです。無料を入口にユーザーを増やすのは最近では主流の戦略ですが、業界全体の水準が下がるというデメリットがあります。こうなると上位2強ぐらいしか生き残れなくなります。せっかく苦労して携帯電話事業に参入したのに、設備が充実したころには旨みの少ない業界になってしまっては意味がありません。
どう業界全体を盛り上げていくかは、今後にかかっているかと思います。
楽天モバイル0円プラン終了後の勢力図
現在、楽天モバイルの0円プランに加入している方は、8月までは0円、9、10月はポイント還元で対応ということで、11月からは全員税込1,078円のプランに移行となります。このタイミングでユーザーの乗り換えがかなり発生しそうです。
恐らくそういった動きを予測して、各社も新プランやキャンペーンなどを打ち出すと思われます。
現状では基本料金が0円のPOVOが移行先最有力となっていそうです。しかし、POVOも180日間でトッピング購入か最低660円の利用実績が無いと、契約解除等の措置となる契約になっています。このあたりを逆手にとってMVNO(格安SIM)事業者から、新プランなどが出てくる可能性もあります。大手キャリアが格安プランを打ち出したことで、MVNOは苦しい状況ですので、この機会に挽回したいところでしょう。
現在楽天モバイル契約中で乗り換え先を検討している方は、8月頃まで様子を見た方が良いかもしません。
楽天モバイルの0円プラン終了については、このタイミングで辞めるなら最初からやらなきゃ良かったのに、と少し思うところがありますが、上で書いたような業界内での存在感をアピールするには必要な施策だったのかもしれません。今後の動きに期待しましょう。