新型コロナ5類移行によりテレワーク廃止企業増加
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、2023年5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行されることが決まりました。この変更に伴い、テレワーク(在宅勤務)を廃止する企業が増えているという報道があります。テレワークは、コロナ禍で働き方の多様化や子育てとの両立を支える手段として注目されてきましたが、今後はどのような影響が出るのでしょうか。
テレワークの終了による影響
テレワークは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、政府や自治体から推奨されてきた働き方です。テレワークを導入した企業は、感染予防だけでなく、通勤時間や費用の削減、生産性や効率の向上、従業員の満足度やモチベーションの向上など、様々なメリットを享受してきました。
一方で、テレワークには課題もありました。例えば、オフィスでのコミュニケーションやチームワークが低下する、在宅環境や設備が整っていない、仕事とプライベートの境界が曖昧になる、家事や育児との両立が難しいなどです。
「5類」移行後は、これまで感染症法に基づいて行われてきた行動制限や医療費負担などが見直されることから、「出社回帰」の動きが広がっています。しかし、テレワークを廃止することは、企業や働く人にとって一概に良いことだけではありません。
ようやく手に入れたどこでもドアを手放す
新型コロナ以前は満員電車で1時間以上かけて毎日出社することが当たり前でした。通勤中の方に「ドラえもんの秘密道具で一番欲しいもの」を聞けば、ダントツで「どこでもドア」がトップとなるのではないでしょうか。
テレワークは通勤時間の無駄を省き、仕事に取り掛かれるという意味で「どこでもドア」といっても過言ではありません。人が会社に行くか、環境が家に来るかの違いがありますが、最も欲しかった秘密道具をようやく手に入れたのに、手放す判断をする企業が多いことに驚きます。
人間は合理的な判断が出来ない生き物
私が大好きな行動経済学の「予想通りに不合理」という書籍があります。
人間は合理的に考えているようで、実際には不合理な行動や考え方をするということを研究・実験された内容が書かれています。
例えば2,200円のボールペンを買おうとしている同僚に、「5分先のお店に同じボールペンが1,700円で売ってたよ」と教えると、多くの方は5分先のお店に買いに行くと思います。しかし、10万円のスーツを買おうとしている同僚に、同様に5分先のお店で500円安く売っていることを教えても、多くの方はその程度なら今の店で買うと判断します。5分で500円安くなるという同じ条件なのですが、違う判断をするというものです。
自身の過去を振り返ると思い当たる事例がたくさんあるのではないでしょうか。
新型コロナがきっかけで広まったテレワークについて、新型コロナが落ち着いてきたからテレワークを廃止する。この判断について不合理な行動になっていないでしょうか。
どこでもドアが開発された未来で、電車や車で移動する人は居るのでしょうか?
テレワーク廃止はさぼる人を基準で考えている
企業がテレワークを廃止する理由の主なものは以下です。
- 新型コロナウイルスの感染リスクが低下したため
- テレワークにかかるコストが高いため
- テレワークでは生産性や効率が低下すると感じたため
- テレワークでは社内のコミュニケーションが不足すると考えたため
- テレワークでは社員の管理や評価が難しいと判断したため
リスク低下とコストがかかること以外は、社員がさぼることを前提とした理由に見えます。コミュニケーション不足や管理や評価が難しいというのは管理職の怠慢です。
以前、ある経営者の方が新型コロナ影響でテレワークを始めるにあたり、このようなことを言っていました。「さぼる人は出社だろうが在宅だろうがさぼる。だったら出来る人が快適に仕事が出来る環境を提供する方が有意義」
私はこの意見に非常に共感を覚えました。こういった考え方が出来る方が合理的な判断が出来る方なのだと感じます。
テレワーク廃止を検討中の企業の方は、手に入れたどこでもドアを手放すのか?再考してみてはいかがでしょうか。