ハードとソフトの一体化が急務
半導体メーカーのBroadcom(ブロードコム)が、仮想化ソフトウェア最大手のVMWareを買収しました。買収額は約610億ドルと超巨額取引ですが、双方のメリットは大きそうです。
ブロードコムはあまり一般消費者には聞き慣れないメーカーですが、NW機器、無線機器への組み込み型の半導体で有名です。Apple製端末にも半導体を提供しています。VMWareは仮想化ソフトで有名なメーカーで、最近はいろいろな分野にも手を伸ばしています。
正直なところ、VMWareはメインの仮想化以外の製品が、どれも業界トップには手が届かない微妙な製品が多いと感じていましたので、今回のブロードコムからの買収は良い方向に進む可能性があります。ブロードコムの狙いはハードウェアとソフトウェアの一体化による、他社への対抗だと思いますが、これほどの巨額での買収ですので、すでになんらかのプランを描いていそうです。今後の動きが楽しみです。
5Gで攻勢をかけるために必要な買収
5G(第5世代移動通信システム)の時代には、通信機器は今とは比にならないほど急増すると予想されており、通信技術も確実に進歩してきています。そんな中、5G時代の覇権を取るために、過去からクアルコムとブロードコムは激しく争っています。
また、ブロードコムにとって大手顧客のAppleが、ブロードコムの半導体から脱却し、独自の通信チップを開発しているというウワサもあります。ブロードコムとしてはAppleからの収益が絶たれる前に、別の事業の柱を作る必要があるという状況であり、今回のVMWare買収に至ったのではないでしょうか。
大手が続々とハードとソフトの一体化を完了しつつある
ハードウェアと心臓部のCPU、脳にあたるOS、さらにそのハードウェアの上で動作するアプリケーションまでを一体化し、トータルサービスとして提供する。このスタイルはAppleが早くから着手し大きな成功を収めています。
ライバルのGoogleも最近はCPU開発に力を入れており、Pixelシリーズなど独自のハードウェアを発売しています。マイクロソフトはソフトウェアシフトで、少し違う路線を行っている感じでしたが、ARMベースの独自CPUを開発という話しが数年前に出ていました。
そんな周囲の動きもあり、ブロードコムも動かない訳にはいきません。とは言えブロードコムとVMWare連合が今からスマートフォンやPCを発売するという事は無いでしょうから、5G対応のIoT機器など、ネットワーク特化の戦略に力を入れていくのではないでしょうか。
しかし、この一連の動きで気になることがあります。
ファブレス企業ばかりで半導体をどう調達するのか?
ハードとソフトを両方持ち、他社との差別化で5G時代を勝ち抜こうと、各連合が考えていることは間違いないと思いますが、どこもファブレス企業と言われる、実際に半導体を製造する工場を持っていない企業ばかりです。現在半導体を製造する工場を持っていて、さらに最新の製造技術を持つのは、最大手のTSMCとサムスン、そしてIntelです。Intelは他社から半導体製造を請け負うファウンドリ・サービスは行っていないため、実質TSMCとサムスンになります。
ハードとソフトの一体化による差別化と言っても、半導体製造を行うこの2社の動きが各社の戦略に大きな影響を与えそうです。とくにTSMCは技術的にかなり先行しているため、TSMCにどれだけ製造してもらえるかは、戦略上かなり重要になりそうです。
最後はVMWare買収からかなり脱線しましたが、今後を占ううえで結構重要な動きでは無いかなと感じました。今後の各社の動きに注目したいです。