経済産業省「未来人材会議」
経済産業省は、2030年、2050年の産業構造の転換を見据えた、今後の人材政策について検討するため、「未来人材会議」を設置し、雇用・人材育成から教育システムに至る政策課題について一体的に議論をしてきました。その内容を踏まえ、未来を支える人材を育成・確保するための大きな方向性と、今後取り組むべき具体策を示すものとして、「未来人材ビジョン」を公表します。
ということで、上記サイトのリンク先に「未来人材ビジョン」という資料が公開されています。このビジョンへの興味の有る無しに関わらず、未来人材ビジョンの資料に記載されている、様々なデータから得られる考察など、私は結構参考になる読みごたえのある資料だなと思いましたので、一読してみてはいかがでしょうか。
しかし、この未来人材ビジョンのポイントである、「好きなことに夢中になれる教育への転換」については、資料を最後まで読んでみてもいまいちピンときませんでした。
好きなことって何だろう?
未来人材会議のような有識者が集まる会議に出席されるような方々は、好きなことが社会に役立つ研究や高度産業への関心だったりといったことを想像されているのかもしれませんが、実際にはどうなのでしょうか。
大半の若者はゲームやアニメ、Youtube視聴といった、創造性を発揮して生み出すよりも、与えられたコンテンツを消費する方に「好き」が偏っているのではないでしょうか。このまま好きに傾倒していくと社会が成り立たなくなるのではないか?と最悪な方向に考えてしまいます。
まず、創造性豊かに新しいことにチャレンジし、自ら生み出すことができる人は、非常に少数だということと、その少数の「生み出せる人」が、成功すれば儲かるYoutuberなどに流れていくことも不安の理由です。
社会の進歩に必要な技術開発や研究に高度人材が居なくなる
ひと昔前は成功者と言われた医者や金融、公務員や起業家などが、リスクばかりが大きくなってそれほど旨みが無くなってしまった状況で、「新しく生み出すことができる高度人材」は、低リスクでもっと儲かる仕事に憧れるのは当然です。高度人材がYoutuberなどに流れることで、社会の進歩に必要な技術開発や研究分野の人材が不足します。日本では特に技術者や研究者の地位があまり高くなく、医療関係もパンデミックや訴訟リスクで人気も下降しています。しかしこういった分野を担う人材が居なくなると、30年、50年後に急に育てようとしても、グローバルでの遅れを取り戻すことはできないでしょう。
こう考えると、ますます「好きなことに夢中になれる教育への転換」って何だろう?と考えてしまいます。
日本にとって必要な分野を手厚くするのが先ではないか
以前に以下でも書いたのですが、高度人材を育てろと言う割に社員への待遇は据え置きという企業は多いと思います。そうなると優秀な人材に育ったとしても好待遇の会社へ転職してしまうでしょう。
「好きなことに夢中になれる教育への転換」も同じようなことで、これからの社会に必要な人材を育成するには、「好きを伸ばして行くことが大事だ」という考えなのだと思いますが、好きが必ず日本の将来に役立つことだとは限りません。
まず日本の将来にとって重要な分野に対し、高度人材に成りうる若者たちが興味を示し、好きになってもらえるような舞台を整えることが必要です。技術者や研究者の待遇を改善しつつ、世界で戦えるような研究施設や研究費を、しっかり国費からも捻出するといったことです。これは民間企業にすべて投げていても、いつまで経っても改善はされません。国としてビジョンを示していくことが重要です。
ぜひ50年後の若者の「好き」が、社会の発展に役立つこととマッチするような未来を築いて欲しいと思います。